ちぇ子かく語りき。

ちぇ子はかく語ったのだ。実情は日常をつらつらツァラトゥストラ。…たまに真あしなが女子高聖の歌詞を頑張って作ってうPしたりします。

ファインディング・ドリー観てきました!(⚠️ネタバレ注意⚠️)

久々にまともな記事の投稿です🙆✨

いやぁ…なんか歌詞ばっかり投稿してたかんね、うん。

 

…今回はファインディング・ニモの続編、ファインディング・ドリーを観てきたので、その感想と若干の評論を…(たぶん評論になってないと思うけど)

 

以下、ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

全体として

…まず、全体の感想としては「最新鋭のCGアニメーションを駆使しつつも、中身としてはディズニーの培ったアニメ文法を踏まえた非常に"古典的なアニメ"をやってる」なと。

これに関しては、まぁニモの頃から同じだったと思います。(具体的な例示は割愛しますが、キャラクターの"瞳"が過剰な程に大きくデザインされてるのはその象徴たるものでしょう)

 

テーマについて

して、前作"ニモ"においては「(親からの)自立・親の子離れ(…つまり"家族")」「先天的な障害の克服」「友情・助け合い」といったテーマが流れていたと思うのですが(あくまで僕の主観ですが)、今作もそれが色濃く…と、いうか今回も正直それだけでしたね。あ、嫌味な言い方に見えますけど、決して批判はしてないですし、むしろ詰め込みすぎて煩雑なテーマになるよりもずっといいと思います。何より、このテーマの明確さこそディズニーアニメの素晴らしさの1つであることは間違いありませんから。

…話がやや逸れましたね、戻します。

今回は前作のテーマをそのままドリーとその家族にずらしてきただけではあったのですが、(前作という下地があったおかげで)ストーリーの舞台の範囲がより狭くなったことで(前作は大海原が舞台だったのに対し、今作では物語は海洋研究センターの周囲に終始しています)、より1つ1つのテーマの掘り下げ方が深くなったように感じます。

…でも、まぁテーマについてはホントに前作と同じとしか言いようが無いので、これ以上はなんとも。(単に僕の話を膨らます能力の欠如ともとれますが、いかんや)

 

ハンディの質の違いと製作陣の意図

…しかしながら1つ気になったのが、ドリーがしきりに自分のハンディ(=物忘れ)に対して謝罪をしていたことです。対して前作におけるニモは自分のハンディに対して、あそこまで謝罪を強調した描写はありませんでした。

これは予測の域を出ませんが、前作の主人公、ニモのハンディは明確な"(身体的)障害"として描かれていた=本人の能力不足によるハンディではないと明確に示されていた為に、本人が自分のハンディについて周囲に謝罪するといった描写は無かった…それに対し今作の主人公であるドリーのハンディは、(何らかの先天的な脳の異常ともとれますが)明確な"障害"としては描写されず、あくまで彼女自身の"気質"の1つとして描かれています。つまり、「ドリーのハンディはその責任が彼女自身にあるとも取れてしまう」という位置付けなのです。…しかしながら謝罪を繰り返すドリーに対し、周囲の魚達はしきりに「誤ることなんてないんだよ、君は君の一番いい方法でものを覚えてたじゃないか」と声をかけます。実は、このことこそがスタッフが"ニモ"と"ドリー"を通して言いたかったことなのではないかと思うのです。

つまり、前作"ニモ"では目に見えるハンディを持つ人々にエールを送るとともに、今作"ドリー"では目に見えないハンディあるいはちょっと難のある性格や気質を持つ人々に対してエールを送りたかった…というのがスタッフ側の真意だと僕は思います。前作でカバーできていなかった部分を今作でカバーしたという形です。その意味では、今作の製作は前作のストーリーを考え始めた段階から決まっていたのかもしれません…と、いうか決まっていたんでしょうね。伝えたいこと云々以前にドリーの過去編はきっちりやっとかないと不完全燃焼になりますもんね。←

 

前作よりも強調された、あるいは前作では絶対に触れられていなかったこと

…さて、他にも相違点は山ほどありますが。

まず、今作は前作よりも人間の(特に子供の)残虐さの描写が強調されていたように感じます。魚達を善意からボートで連れ去っていくのは序の口で、お触りコーナー・つっつきコーナーの子供達の掌の、そしてそれに掴まれた魚達の描写に僕は完全にある種の狂気を感じましたし、物語のラストでドリーとタコの手で水族館へ移送予定だった魚ごとトラックが海へ落下した際には、海洋研究センターはそれを「ご覧いただいているのは我々の活動の最終ステップです」などと嘯き、自分たちの手柄にしてしまいます(まぁあの場合はそうしてしまうことで生じる社会責任などの方が多くつきそうですが←)。ここについては、こんな人間の「いやらしい」部分も今作は見せてくるのか、と驚きました。

また特に象徴的だったのは係員が運ぶバケツの中に死んだ魚が束にして入れられていたシーンです。このように、あからさまに人間の残虐さの描写は前作よりもパワーアップされている、という印象でした。

しかも、最後のバケツのシーンでは、そこに紛れ込んでしまったドリーが魚の死体とともに昔の友人であるディスティニーという名前のジンベエザメの水槽に投げ込まれ、感動の再会を果たす、という流れなのですが…このシーンは明らかに異常なんです。何故かというと、「ドリーが親しげに話しかける(当初ドリーは彼らが死んだフリをしてるだけだと思い話しかけていた)仲間である魚達を食い殺してドリーの友人であるディスティニーが暮らしている」ということを物語が肯定してしまっているんです。この領域は(完全にモブキャラのアホウドリが魚を食べようとするといった描写はありましたが)前作では完全に隠蔽されていたものでした。名有りの、しかも主人公サイドの魚がそういったことをしてるといった描写が(物語で全く触れられないとはいえ)出てくるなんてことは、前作からすれば明らかに異常だったと思います。

さらに、冒頭でドリーがHについて言及しかけるといったコメディシーンの描写…これも、前作では考えられなかったものだと思います。

…またまた僕個人の勝手な推測なのですが、この3つを並べたときに、"あること"に気がつきませんか?

 

上がった対象年齢

おそらくですが、僕はこの"ファインディング・ドリー"は、前作"ニモ"の焼き直しではなく、むしろ当時リアルタイムでそれを観ていた世代にむけて、前作をいわば"補完"するような形で製作されたものではないかと思います。

明らかに前作と同じような子供向けではないんです。

そもそも前作のボス(この言い方が正しいのかはわかりませんが)であった歯医者、矯正娘ともにコッテコテの人間のエゴの塊として描写されており、やってることは「魚を趣味で捕まえて水槽にブチ込んで糞ガキに引き渡して糞ガキはそれを面白半分に殺す」といったシンプルな悪行。しかしながら今作の敵(同前)である海洋研究センターのしていることは「魚を回収し、治療し、外の世界に戻す…または海よりも安全な水族館へ移送する」というもので、しかも研究所所長の名前、顔ともにほんの少し登場しますが、それだけでストーリーには全く関わってこず、前作のような"具体的な個人としての悪者"の描写はありません。言ってしまえば、今回あるのは"センター"という人間の集合体のイメージだけです。なので、今作の敵は少し考えればやってることがホントに悪いことなのか一瞬戸惑うものになっているのです。これは小さな子供には理解不能でしょう。

このことや、前述した食物連鎖の具体的な描写、下ネタの描写からも、制作側は明らかにもっと上の世代を意図していると読むことは十分に可能だと思います。

それは何故か…と、聞かれましても、僕にはそこまでを推測し論を組み立てる能力がないので、残念ながら現状は「今作が前作に足りていなかった部分をカバーする形の作品であるから」としかお答えできませんが。

 

最後に

上の項の最後と被るようにはなりますが、何故このタイミングでこの作品が発表されたのか…ということについては、近年の家族の絆の希薄化であるとか、自分に自信を持てない若者の増加であるとか…そういったものと絡めて論じることはいくらでもできるのでしょうが(僕の能力では勿論不可能ですが)、そういった考察は(ミネルヴァの梟ではありませんが)本来もっと時間を置いてからされるべきものであると僕は思っていますので、能力がないということ以前に、ここでは語りません。…と、いうかぶっちゃけそれを今議論したところで何の意味もないと僕は思ってます。

 

まぁ、諸々の考察とかそういったものを除いて単なる「お客さん」として観ても、やはり天下のディズニーアニメということはあってとても面白く最後まで観ることが出来ました。

ストーリーも引っかかることなくスイスイ進んでいき、伏線も難なくしっかり回収されていましたし、アニメ映画としてはCGの技術の高さも含めて満点だと思います。(僕の中ではこれを超える「殿堂入り」というランクがあるのですが。ちなみに「殿堂入り」にランクインしてる作品は主に富野や押井や今敏等の作品…)

 

…最後の最後になりますが、ちょっと「おっ。」と思ったのが、今作のラストのカットにはニモが居ないんですね。

具体的には、一緒に美しい景色を眺めるドリーとマーリンが映り、そこからカメラがだんだんロングになっていき二匹の姿が見えなくなり、風景だけのフレームに「THE END」の表示…といった具合で。

この締め方には、「あ、あくまで今作の主人公はドリーだったんだな。」って思いました。

 

 

ふぃ〜!

真面目に映画評論とか書くと疲れるね。

ホントに疲れた。

ここまで読んでくれたみんなも疲れたと思う。(そもそもここまで読むやつおるんか謎やけど)

お疲れさま。

そしてありがとうございました。

 

俺は今から、寝る!!!